湯山温泉郷のなかにある
隠れたそばの名店
石臼挽きのそば粉でつくる手打ち蕎麦
とろみのある湯で“美人の湯”とも称される「湯山温泉郷」。古くから湯治場として親しまれてきた「元湯」のほど近くに、「そば処 山の幸館」はあります。同館の館長兼そば職人であり、そば生産者でもある椎葉信博さんを訪ねました。椎葉さんは水上村出身。JA職員を経て、そば職人になりました。「当初は仕入れたそば粉で機械打ちのうどんそばを提供していましたが、今は奥球磨のそば粉を使った手打ちそばを提供しています」。
村にルーツのある蕎麦を!
水上村の在来種に着目
古来からそばの栽培が盛んだった水上村では、自家製の田舎そばを楽しむ家庭も多くありました。「山の幸館」のあり方を模索するなかで、水上村の魅力を伝える店でありたいと考えた椎葉さんは、村の在来種のそばに着目。作物の栽培指導をしていた経験を生かし、栽培の推進を始めました。地道な推進活動で村内の栽培量は一気に増え、数年後には大半を水上村産でまかなえるようになっていきました。
香りと食感を楽しむ石臼挽きのそば粉
「せっかく地元のそばの実が手に入るのなら、もっと質の高いそばを提供したい」そんな思いを抱くようになった椎葉さんは、石臼を導入することに。「石臼でひくと丸みのある粒子になるため、しっとりとしたそば粉ができます。また、ゆっくり回して製粉することで製粉時の熱が発生しにくく、粘りや香りが引き立つそば粉になるんです」。この石臼が縁を呼び、そば打ちの師匠に出会った椎葉さんはそれまでの概念を覆されることになります。
そばは緑色?それとも灰色?
師匠直伝のまるぬきそば
「緑色のまるぬきそばこそ、そば本来の味わいを楽しめるのだと師匠に説かれ、驚きました。それまで私たちが食べていたのは、灰色がかった玄そば。これが田舎らしくていいと思っていたのですが、師匠が打つ麵は緑色。麵をすすった瞬間の香りの立ち方が、まったく違っていたんです」。原点に立ち返り、そば打ち修行を始めた椎葉さん。今では本格そばを味わう食処として知られ、リピーターや常連客が訪れる店になりました。
村の魅力を再構築
「村だけでまかなえない分は、奥球磨の近隣エリアの農家さんに栽培していただいています。自家採種した水上村の在来種を種として使っていただくことで、本当の意味で、水上村のおいしさが詰まったそばを提供できるようになりました」。こうして作られたそばは店内でのお食事はもちろん、そば打ち体験や、打ち立ての生麺の持ち帰りなどでも味わえます。「地域の方が、来客など特別な日にも利用してくださるのがなによりうれしいです」。